森を手入れし、木を使い切る

“手入れをやめた森は、
木が増えても
豊かにはならない。”
株式会社コモレビは、手入れの止まった人工林を引き受け、間伐と再造林を行い、そこから出た木材を建築と家具の現場へ届けています。森を守ることと木を使うことを対立させず、使うことで手入れが続く仕組みをつくります。2019年の創業から 8 年目にあたる 2026年度の活動を、この報告書にまとめました。
目次
対象期間 2025年4月1日〜2026年3月31日
全 24 ページ
林業の現場に入って最初に驚いたのは、木が余っていることでした。戦後に植えられた人工林の多くが、いま伐り時を迎えています。それなのに手入れが止まり、放置された林が広がっている。理由は単純で、伐って運んで売っても、費用に見合わないからです。
「森を守る」という言葉は、しばしば「手をつけない」と同じ意味で使われます。しかし人が植えた人工林は、人が手入れをしないと荒れます。下層に光が届かず、下草が生えず、土が流れ、生きものが減る。放置は保護ではありません。
私たちがやっているのは、手入れが続く経済をつくることです。間伐で出た木を、価格が付く形に加工して届ける。届け先が増えれば、手入れの費用が回収できる。回収できれば、来年も手入れができる。それだけの話ですが、その循環がいま止まっています。
2026年度は、施業面積 612 ヘクタール、出荷量 9,840 立方メートルまで来ました。創業時に掲げた「2030年に年 1,000 ヘクタール」には届いていません。届いていないことも含めて、この報告書に書きました。
数字が伸びた項目より、伸びなかった項目のほうが、次の 1 年を決めると思っています。

株式会社コモレビ 代表取締役
大杉 律

森林所有者と木材の使い手のあいだに立ち、手入れの費用が回る流れをつくる。
手入れの費用を、木材の売り先から回収する
私たちの事業は 3 つの部分でできています。森林所有者から施業を受託すること、間伐と再造林を実施すること、そして出た木材を建築・家具の現場へ直接届けることです。
この 3 つを別々の事業者が担うのが、これまでの林業の形でした。所有者は森林組合に施業を頼み、出た木材は市場に出て、問屋を経て工務店に届きます。段階が多いぶん、所有者の手元に残る金額は小さくなります。
私たちは、出口を自分で持つことにしました。誰がどこでその木を使うかが分かっていれば、伐る前に価格が決まります。価格が決まれば、所有者に提示できる金額も確定します。「伐ってみないと分からない」を減らすことが、手入れを再開してもらう最大の条件でした。
2026年度の受託面積は 612 ヘクタール、うち再造林まで実施したのが 384 ヘクタールです。間伐だけで終わっている面積が残っているのは、私たちの課題です(P.21)。
※ 数値の定義と算定方法は P.23 に記載しています。
※ 数値の定義と算定方法は P.23 に記載しています。第三者機関による検証は受けていません。
中央に流れるのは、木材と代金だけではありません。「どこの森の、いつ伐った、どの木か」という履歴も一緒に流れます。使い手側がそれを求めるようになったことが、この仕組みが成り立つ条件になりました。
※ 当社の受け取る手数料は、立木の買い取り額とは別に、施業受託契約に基づいて算定しています。所有者への支払額は契約時に確定し、市場価格の変動による事後の減額は行いません。

放置は保護ではない。人が植えた森は、人が手を入れないと荒れる。
植えた木が伐り時を迎え、手入れだけが止まっている
私たちが施業を受託している地域の人工林は、その 7 割以上が樹齢 50 年を超えています。戦後に植えられた木が、一斉に伐り時を迎えている状態です。
しかし手入れは止まっています。間伐が行われないと、木が密に立ったまま太らず、林内に光が届きません。下草が生えなければ地表がむき出しになり、雨で土が流れます。土が流れれば、次の世代の木が育ちません。
「木が増えている」ことと「森が豊かである」ことは別です。蓄積量だけを見れば増加していますが、その中身は細い木が密集した状態です。
ピークは 11 齢級(51〜55 年生)で 24.8%。伐期を迎えた林分が面積の 7 割を占める。

左:列状間伐。3 列おきに 1 列を伐り、林内に光を入れる。

右:植栽から 3 か月。獣害防止の保護筒を装着している。
施業は 1 年で終わりません。伐って植えて終わりではなく、植えたあとの 5 年間が最も手がかかります。下刈りを毎年行わないと、苗木は雑草に覆われて枯れます。
私たちが 3 年後の生存率を指標にしているのはそのためです。2026年度に確認した 3 年後生存率は 88.4%(2023年度植栽分)。獣害の多い区画では 70% を下回る場所もあり、保護筒の仕様を毎年見直しています。
施業を担うのは、提携する 34 の林業事業体です。当社の直接雇用は 42 名で、残りは事業体への発注として実施しています。
※ ④下刈りの費用が全工程の 38.2% を占めます(2026年度の実績)。ここが再造林の最大の障壁です。
※ 樹種・傾斜・獣害の程度により工程と年数は変わります。上表は当社受託地域の標準的な例です。
確認種数は増えたが、因果は特定できていない
2019年から、施業地の 48 地点で年 2 回の生物調査を続けています。確認した種数は 2019年の 214 種から 2026年の 287 種へ増加しました。
ただし、この増加を施業の効果と断定することはできません。調査地点が増えたこと、調査手法が変わったこと、気候条件の変化など、他の要因を分離できていないためです。今後 3 年かけて、施業前後の同一地点での比較に切り替えます。
※ 確認種数の定義と調査方法は P.23 に記載しています。第三者機関による検証は受けていません。

出口が決まっていれば、伐る前に価格が決まる。
段階を減らすこと自体が目的ではありません。目的は、伐る前に価格を確定させることです。原木市場を経由すると、価格が決まるのは伐ったあとになります。所有者は「いくらになるか分からないまま伐る」判断を迫られます。
私たちは使い手から先に用途と数量を受け、そこから逆算して所有者に金額を提示します。2026年度の出荷量 9,840 立方メートルのうち、82.4% が伐採前に納品先の決まっていたものです。
出荷量 9,840 m³ のうち、伐採着手時点で納品先と数量が確定していた材積の割合。定義は P.23。



※ 納品先の企業名・施設名は掲載していません。
新規就業 41 名。ただし 3 年定着率は 68.3%
施業を続けるうえで、面積より先に限界が来るのは人です。2026年度時点で、当社と提携事業体を合わせた地域雇用は 116 名。そのうち 41 名がこの 3 年以内に林業へ新規就業した人たちです。
新規就業者は増えましたが、定着はしていません。3 年定着率は 68.3%。離職理由として最も多いのは収入の不安定さで、次いで通年雇用でないことでした。
2027年度から、提携事業体と共同で通年雇用の枠を設けます。冬季に施業ができない地域では、製材・加工の工程に配置する形を試します。
※ 地域雇用・3 年定着率の定義は P.23 に記載しています。課題と次の一手は P.21。

何がどう良くなったのか、どこが動いていないのか。
使われるほど、
森に手が入る。
2 つの環は独立していません。右の環が回ることで、左の環を回す費用が生まれます。
私たちが直接コントロールできるのは右の環だけです。左の環は結果として現れるもので、時間差があります。
左の環の指標(下層植生・表土・生物種数)は、因果を特定できていません(P.13)。断定を避けています。
| 項目 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 施業面積(ha) | 118 | 196 | 264 | 331 | 398 | 405 | 516 | 612 |
| うち再造林(ha) | 42 | 78 | 121 | 166 | 214 | 232 | 311 | 384 |
| 出荷量(m³) | 1,240 | 2,180 | 3,410 | 4,620 | 5,880 | 6,340 | 7,970 | 9,840 |
| 植栽本数(千本) | 92 | 158 | 231 | 302 | 386 | 402 | 524 | 641 |
| 地域雇用(名) | 34 | 46 | 61 | 74 | 89 | 94 | 102 | 116 |
| 提携事業体(社) | 6 | 11 | 17 | 21 | 26 | 28 | 31 | 34 |
※ 累計施業面積 2,840 ha、累計植栽本数 2,736 千本は、いずれも上表 8 期の合計です。数値の定義は P.23 を参照してください。
伸びなかった項目に、次の 1 年がある
伸びなかった項目を、実績と同じ密度で記載しています。
2026年度の施業面積 612 ha のうち、再造林まで実施できたのは 384 ha(62.7%)。
再造林の費用は下刈り 5 年分を含めると間伐の 2.8 倍になる。所有者が負担を決断できない。
2027年度から、下刈り費用を出材収入から分割で回収する契約形態を試行する(20 ha 規模で開始)。
3 年定着率 68.3%。離職理由の 1 位は収入の不安定さ。
積雪地では冬季に施業ができず、通年の仕事が用意できない。
提携事業体と共同で通年雇用枠を設ける。冬季は製材・加工工程へ配置する。
生物種数は増加しているが、施業との因果を特定できていない。CO2 吸収量も推計値にとどまる。
施業前後の同一地点比較を設計していなかった。調査手法も年により変わっている。
2027年度から、施業予定地で施業前調査を必須化する。算定方法を公開し、第三者による確認を検討する。
※ 上表は目標であり、達成を保証するものではありません。前提条件は P.23 に記載しています。
当該年度に伐採または再造林を実施した面積の合計。同一区画で両方を実施した場合は 1 回として計上。
伐採後に植栽を行い、獣害対策まで完了した状態。下刈りの実施は含まない。
当社が買い取り、製材を経て納品先へ引き渡した木材の材積(丸太換算)。
伐採着手時点で納品先と数量が確定していた材積の割合。
植栽から 3 年経過時点で、生存が確認できた苗木の本数を植栽本数で除した値。抽出調査(各区画 100 本)による。
当社の直接雇用(42 名)と、提携事業体における当社発注業務の従事者(74 名)の合計。兼業者は 1 名として計上。
新規就業から 3 年経過時点で林業に従事している人数を、新規就業者数で除した値。
調査地点で目視・録音・自動撮影のいずれかで確認された生物の種数。同一種の重複は除く。
施業面積・樹種・林齢から、公表されている一般的な係数を用いて推計。実測ではありません。累計推計値 18,600 t-CO2(2019〜2026年度)。
植栽を実施した苗木の本数。活着の可否は反映していません。活着後の状態は「3年後生存率」で別に示しています。
施業計画図に基づく計画面積。実測ではありません。誤差は概ね ±3% と想定しています。
本報告書に記載した数値は、当社が自ら集計したものです。
第三者機関による検証・保証は受けていません。
2027年度以降、CO2 吸収量と生物調査について外部確認の導入を検討しています。
提携事業体が現在の水準で稼働を継続すること、災害による施業中断がないこと、木材需要が現在の水準を下回らないこと。いずれかが崩れた場合、目標は修正します。
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